猫専門病院ノアのねこ舟

子猫の腸閉塞

先週、生後2か月の子猫が急性頻回嘔吐の為来院しました。

まだ体重1㎏の子猫さんで名前はきなこちゃん。何が原因か検査してみることに…。

子猫の嘔吐は何でもありで感染症や異物をまず疑います。

この子も飼主さんに心当たりがないかお話を聞きながら原因を探っていくと腸に異常が見つかりました。

腹部超音波検査をしたところ、腸の一部がジャバラ状になっておりその中にひも状の異物らしき影が見えたのです。

これが本当に異物だとすると一大事です。子猫なので遊んでいるうちに何か飲み込んだ可能性もあります。飼主さんは見当もつかない、ということだったので異物による腸閉塞を疑って緊急で試験開腹をすることになりました。

お腹を開いてみると胃から小腸にかけて何かが詰まっていたので、まず胃を切開することに。

中からは毛玉と糸くず、人の髪の毛が混ざった塊が出てきました。異物は腸までつながっていたので胃からすべて取り除こうと試みましたが途中で切れてしまい、切れたと同時にジャバラ状になっていた腸はもとに戻りました。しかし異物はまだ腸の中なので今度は腸を開いて異物を取り除かなければなりません。

きなこちゃんの小さく細い腸を切開し、中の異物を取り除くと胃の中と同じような毛玉と人の髪の毛が出てきました。

きなこちゃんは他にも数匹の猫と一緒に暮らしているのでお互いをグルーミングしているときに少しずつ毛を飲み込んでいたのでしょう。

また、埃と共に落ちている人の髪の毛も何気なく口にしていたのでしょう。

オモチャやリボンなどの明らかな異物を飲み込んでいたわけではなく日常の生活の中で起きてしまった事故のようなものでした。

しかし今回のようなケースはどの猫ちゃんにも起こりうる出来事だと思います。特に長毛の猫ちゃんは毛玉のリスクが高くなりますし、髪の毛や糸くずも必ず部屋に落ちているでしょう。それを何とかするためにこまめにブラッシングをして抜け毛を少なくしたり毛玉ケアのフードやサプリメントを与えたり、毎日掃除をしたりと人間側の努力も必要ですね。

 

きなこちゃんは無事に麻酔と手術を乗り越えてくれました。術後はお腹の痛みと麻酔の影響で横たわっています。写真はICUで入院中の様子です。翌日には座ってこちらを見てくれていました。

 

きなこちゃんの経過は次回の診療日誌でご報告します!

早く元気になってくれますように…。